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98年 3月のOCC公開(無料)サロンの内容です。

記事は、写真の下にあります。

( 印刷してお読みください )


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下の写真は、講師の副田さん
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スライドは、東京ガスの新聞広告。
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OCC公開セミナー「副田高行アート講座」


既成の方法論にとらわれない新しい広告表現を!
  


岩永嘉弘氏のネーミング講座、葛西薫氏のアート講座、

斎藤洋久氏のプロデュース講座に続くOCCセミナー第

4弾「副田高行アート講座」が3月19日、電通関西支

社12Fホールで行われました。当日は20〜60才代、

新人〜超ベテランクリエーターまで100名を超える幅

広い聴講者を集め、予定時間をはるかにオーバーする熱

の入りようでした。以下は、当日どうしても参加できな

かった方のための10分で読める“超ダイジェスト版”

です。




はじめに)ボクには決まった方法論がない


都立工芸高校のデザイン科というところを出て、今48

才ですから、30年たってるんですが、自分のクリエー

ティブに決まった流儀っていうのはあまりなくて、その

仕事によっていろいろ変化してるというか、むしろ広告

のクリエーティブってのはあまり自分の方法論とかを持

たないでやるほうが正しいやり方じゃないかな、と。


その1)岩田屋の仕事


いまは独立してるんですが、仲畑さん(コピーライター

仲畑貴志氏)とは10なん年か一緒に仕事をしまして、

これも8〜9年前に仲畑さんとやった、九州にあるデパ

ートで岩田屋の仕事です。


「想い出の街」というキャンペーンタイトルは岩田屋が

博多の街という地域に密着した広告というか店舗という

か、ほかの東京からやってきたデパートとちがって、昔

から博多にある老舗で地元との結び付きが強いデパート

だということを表現したかったんです。


そこでクイズとか新婚さんいらしゃい!とかの視聴者

参加型ってのが広告のなかでもやれないかな?と考え

て、一般の人から写真を募集して、それを使ってキャ

ンペーンを1年間やろうということで始めたものです。



写真を募集するうえで見本写真としてまず1回目、博多

に住む井上孝治さん、当時70才のおじいちゃんで、も

う亡くなりましたけど、九州の広告写真家の井上はじめ

さんのお父さんが段ボール何箱もネガを持ってまして、

見せてもらうと、これが素晴しい。ということで、掲載

したもので、これも昭和30年ごろの写真です。コピー

は「テレビのある家の子にはやさしくしました」。

日本が貧しく物もなく、でもとても元気だった時代が見

事に表現されていて…

ボク自身小学校まで九州でそのあと東京に引っ越してま

すから、あそこに写ってるのはボク自身じゃないかなと

思うくらいです。


結局この井上孝治さんの写真があまりにいいんで当初予

定した一般参加型のキャンペーンは断念しました。やは

り、一般の人のは記念写真みたいなのがほとんどで普遍

性がないんですね。

それで、ずっと井上さんの写真だけでやってたんですけ

ど、この井上孝治さんの写真はこの広告だけで終わらせ

るのは惜しいので東京の河出書房の編集者を巻き込んで

「想い出の街」というタイトルで写真集を出しました。

今でも、青山あたりの書店にちゃんと置いてあるはずで

す。


その2)トリスウイスキーの仕事


コピーライターは当時サントリーにいた一倉宏さん。ボ

クがまだサンアドにいた時電話があって、コピーだけ決

まっていてビジュアルがないというんで、話を聞くと、

「トリスのおいしい町はよい人の住んでいる町です」と

いうコピーだと。じゃ、こういうことにしよう!という

のが「トリスのおいしい町はよい人しか住んでいない」

そういう架空の町を作ってしまおう!と。

善良市という名前をつけたんです。毎月1回、社会面の

対抗面に、物騒な事件、悪いニュースの反対側に7段の

ホッとするいい話だけを載せようと。ウイスキーの品質

とかを表現するんではなくて、ヒューマンな「ああ、自

分たちはトリス飲んでてよかった」という気分だけを表

現しようという広告です。


上に8段分の記事があって、その下に記事と同じ文字組

みでボディコピーを入れてある。

記事を読んでいくとそのまま新聞広告を読んじゃうカメ

レオンのような広告を目指したんです。そのころボクは

ゴルフなんか大嫌いで野球に凝ってましたから草野球ネ

タとか、写真も野球仲間のカメラマンが撮ったんですが

…ミスコンネタ、サンアドの受付嬢が出演してます。こ

れはサンアドの近くのパレスホテルに年1回本物のミス

コン嬢が来るのをヒントにしたもので、当時のミスコン

反対の社会事情も反映させてます…とか、3年続けてや

ってTCC特別賞というのをデザイナーのボクももらい

ました。朝日新聞から「広告なのに記事と間違えてマジ

メな読者から電話が入ってくる」と叱られまして、途中

から左端に広告というマークをいれてます。広告に広告

というマークをいれるのも変なものですが、ま、それも

面白いかな?と。


広告写真というと、いいカメラマンでいいロケーション

という考え方に逆らおう!

という考え方がボクにはありまして、カメラも安物でイ

ラストは野バラ社という小さな版社。図画辞典とかカッ

ト集とかを、ボクが小さいころから見てたんですが、な

かなかいいんですね。広告だからといっていわゆるイラ

ストレーターにばかり頼まなきゃいけないというわけは

ない。

カット集から引張ってきても立派な広告になるぞ!とい

うことをやったわけです。

それは


その3)毎日新聞の仕事


でも同じです。新聞の見出しばっかり並べてコピーは

「なんだ、ぜんぶ人間のせじゃないか」。見出しだけで

も、ビジュアルになる。顔写真だけでも、海外のトピッ

クス、くだらないコンテストの記事とか時々載ってます

よね…だけでもビジュアルになるんです。


その4)シャープの仕事


シャープの企業スローガン「目のつけどころがシャープ

でしょ」はこのキャンペーンで使われたのが発端なんで

す。コピーは「いまどき大画面だけじゃいばれない」

「では、どこで選ぶか?」「シャープは…だから、ほか

とは違います」という3段論法になってまして、コピー

はやっぱり仲畑さんで、もともと仲畑さんのコピーは浪

速節ですから長いのが多い。この時はコピーが先にでき

ていて長い。

で、どうしようかなあ?と考えてたら、本屋で南伸坊だ

と思うんですがはり紙の本を見まして、はり紙というス

タイルに気づいたんです。「車でお金貸します」とかの

ね。シャープの言うべき内容をすべてはり紙にして、そ

れをいろんなロケーションで撮影する。ガード下のはり

紙禁止と書いてある壁とか、公園の吸い殻入れとか…



この広告の面白さは、普通、ポスターっていうと、キャ

ッチは右上でロゴが左下で商品写真があってという一種

のスタイル、それを取り外してる。ひとつの風景写真の

なかに要素が全部収まる版下のいらない広告。

してやったり!


その5)札幌いちご会の仕事


コピーの糸井重里さんのところに車椅子の市民運動家が

資金作りにテレカを作ってほしいという依頼が来て、じ

ゃあちゃんと作ろうということで、糸井さん愛用のぬい

ぐるみの足をもいで篠山紀信さんに写真を撮ってもらっ

た。コピーは「どうぞ、まっすぐみてください」。その

人は手も足も不自由で、アゴかなんかで打ったお礼の

手紙の和文かなタイプを見たとき、ジーンときちゃって。

ああ、コピーの書体はこれでやろうと思って、最初は漢

字の「見る」だったのをひらがなの「みる」に変えさせ

てもらって作ったのが、このポスター。


コピーを読んで糸井重里という人はほんと素晴しいコピ

ーライターだとあらためて感心しました。身体障害者を

町で見ると思わず目を避けてまっすぐ見ない人に、そん

なことをしないでまっすぐ見てくれ!私たちは不便では

あっても決して不幸な存在ではないんだ。私たちは町へ

出たい。不幸ではない、でも不便だ。だから便利な存在

である健常者に手伝ってほしい。だからまっすぐ見てほ

しい。という内容です。


その6)ペプシの突き出しの仕事


札幌いちご会の人もすごいポジティブだったんですが、

長野のパラリンピックをテレビで見て、選手の一人が

「足をなくしたおかげでメダルをもらえた」と。普通の

人だったらは絶対オリンピックになんか出られない。で

も車椅子だったら努力すればテレビにも出られる。そう

いう逆境を前向きにとらえる姿勢ってのに感銘を受けま

した…。


話は変わりますが、仲畑貴志さんもそういうタイプで、

お金がなくて大きな原稿が作れないというときも、「じ

ゃあ小さな原稿をいっぱい作ろうよ。コピーいっぱい書

けるし、いっぱい作品作れるじゃない」って。お金がな

いのを苦にしないというか、ポジティブ思考なんですね。


で、これはペプシコーラの突き出し広告で、言っている

ことはダイエットペプシはコカコーラライトより低カロ

リーだという比較広告ですが、小さなスペースだとこの

ように過激な広告もできてしまう!という見本です。


おわりに)既成の方法論にとらわれないで


広告ってのは、いろんな人がいろんな方法論でやってい

る。でも皆さんにお話ししたいのは、なるだけそういう

既成概念にとらわれないで、自分で何か新しいことをや

りたいと思うこと、自分形の方法論をつくる、自分にし

か出せない個性を広告に反映させるということ。そこで

クリエーターの存在理由が生まれるということです。

広告の方法論は出つくしているかもしれない。うまい人

も沢山いる。でも、だからこそ、その人しか持っていな

い感性で広告を作ってほしい、そう思います。




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